~ジャパニーズ クラフト ジン~前編

イギリスやアメリカなど世界中でブームとなっているクラフトジン。
実はここ日本でも着実に流行しつつあります。
人気の高まりを受け、実は日本の酒類メーカーもクラフトジンの「生産」に力を入れてきています。
これまでジンといえばイギリスなど海外の銘柄がほとんどでしたが、日本製のいわゆるジャパニーズ・クラフトジンなるものがどんどんリリースされています。
前編ではジンの歴史やジャパニーズクラフトジンの始まりなどをご紹介させて頂きます。

『ジン』歴史


マティーニ、ジントニック、ジンバック、ジンライムなど日本ではカクテルのベースとして使われることの多いジン。
実はお酒ではなく薬として誕生していました。
元々ジンはオランダで生まれました。
オランダのライデン大学医学部教授であるフランシスクル・シルヴィウスが、杜松の実(ジュニパーベリー)を使用して解熱効果や利尿効果を期待して作った薬用酒が、ジンでした。
ところがその爽やかな香りから薬ではなくお酒として飲んでも美味しいと評判となり、オランダにて流行しました。
フランス語で杜松の実(ジュニパーベリー)を意味する「ジュニエーブル」の名で広く親しまれました。
その過程で何故かスイスのジュネーブと混合されて「ジェネバ」、更にイギリスに渡った時にこれが短縮されて「ジン」と呼ばれるようになりました。
その頃イギリスではジンの原材料になる穀類が豊作続きで安かったこともあり瞬く間に「安くて強い酒」として広まり本国以上に爆発的な人気を得ました。

『ジン』日本到来


一方日本にジンが入ってきたのはいつなのでしょうか。
はっきりとした記録は残っていませんが江戸時代には伝来されていることが確認されています。
というのも鎖国時代、長崎の出島で働いていた日本人の中に、そこに住んでいた外国人達が飲んでいたお酒のボトルを持ち帰る人がいました。
その持ち帰ったボトルの中にジンボトルも含まれていました。
これらのボトルは観賞用や保存容器、また溶かして新たなボトルを作るのに使われていたようです。
とはいえ、一般庶民がジンを口にできるようになったのは明治以降のこと。
1870(明治3)年に外国人居留区に店を構えるカルノー商会がジンを輸入、販売したという記録が残っています。
今のように気軽に洋酒を飲める時代ではなく一部の人々が楽しむ嗜好品でした。
それでもジンは日本の文化に溶け込んでいきカクテルのベースとして使われるようになります。
特に「ミリオン・ダラー」というジンベースのカクテルは明治時代に横浜のホテルにて考案され世界に広まったもの。
このように世界で愛される日本発のジンカクテルまで生まれました。

『ジャパニーズクラフトジン』誕生

日本初のクラフトジンをつくっているのは、ジンの本場であるイギリス生まれのデービッド・クロール。
彼が初めて日本を訪れたのは、大学卒業後にイギリスで就職した日本法人の金融関係の企業研修でした。
研修後はイギリスで勤務していましたが、イギリスから日本へ転勤になり、東京で働きました。
その後、1995年にその企業を退職し、「日本のウイスキーを母国に紹介したい」という想いから酒関連のビジネスに携わり2006年にお酒の輸出会社を東京で設立しました。
そして2014年に、大好きな京都で、自分たちの手でオリジナルのお酒をつくろうと、酒造会社を立ち上げました。
どんなものを作るかさんざん考えた結果、国内になかったクラフトジンをつくろうと、オリジナルブランド「季の美」(日本初クラフトジン)プロジェクトをスタートさせました。
国産の洋酒が少ないという国内市場の現状と、世界的にクラフトブームが起きていたこともジンを選んだ理由です。
小規模生産のクラフトジンとはいえ、ゼロからのスタートだったため、やることは山積みでした。
水の質が素晴らしく、日本酒が有名な京都・伏見にほど近いこの場所で倉庫を買い取り、ドイツから輸入した蒸溜器をはじめとした設備を整え、いまの京都蒸溜所のかたちとなりました。
そしてやっと酒造免許が降りて、そこから3ヶ月間レシピを試し続け、2016年10月中旬にようやく「季の美」が発売となったのです。
こうして日本初クラフトジンは誕生しました。
「季の美」がリリースされたのを皮切りに、今焼酎の酒蔵や大手ウイスキーメーカーまでもが参入し、今の日本のジンブームを牽引しています。

『ジャパニーズクラフトジン』特徴


ジャパニーズクラフトジンの特徴は大きく分けて5つあります。
①日本らしさが反映されている
ジャパニーズクラフトジンに限らず、クラフトジンはその土地や風土などの「〜らしさ」で説明できるのが大きな特徴です。
ジャパニーズクラフトジンにおいても、ただ単に日本で造られているだけでなく、用いる素材や製法など「日本らしさ」が反映されています。
詳しくは後述しますが、ある意味では「日本人に最適化されたジン」と捉えることもできます。
②焼酎をベースに使用する例が少なくない
ジンはベースとなるお酒にボタニカル(ハーブ、スパイス、果皮など)を加え風味づけされますが、ジャパニーズクラフトジンでは、ベースとなるお酒にも「日本らしさ」が反映されています。
芋焼酎をベースに使用する油津吟やAKAYANE、それに米焼酎もしくはライススピリッツを使用する季の美や、和美人など、焼酎や日本酒由来のスピリッツをベースに使用する例が多々あります。
④地域性が反映されている
ジンは、ジュニパーベリーをはじめとしたボタニカルの華やかな香りや風味を楽しむお酒。
ジャパニーズクラフトジンでは、日本特有のボタニカルが多く使用される傾向があります。
日本には国内の各地域や四季によって様々な名産品があり、それらは独自のボタニカルとして活かせるのです。
例えば柚子や茶葉、山椒や生姜、ときにはヒノキや桜の花まで使用される例があります。
これらのボタニカルは日本人なら誰しも味わった、もしくは感じたことがあるものでしょう。
もちろん、他国産のジンでこれらのボタニカルは一般的ではありません。
⑤蒸留酒造りの技術力を活かした造り
蒸日本では古くから焼酎造りが行われ、近年はウイスキーの産地として世界から評価されています。
その蒸留酒を造る技術が、ジンづくりにも活かされています。
丁寧で繊細な造りはもちろん、具体的な例を挙げると、ジンではあまり用いられない、ボタニカルを特性ごとに分けて注出する方法や、それに伴いブレンドを行うジンも多々あります。
これらの製法は、当然のことながら技術力や経験なしにはできません。留酒造りの技術力を活かした造りです。

前編まとめ

前編ではジンの歴史やジャパニーズクラフトジンの誕生についてご紹介させて頂きました。
ジンは元々お酒ではなく薬として誕生したなんて驚きですよね。
今は当たり前にあるジャパニーズクラフトジン。
デービット・クロールが違うお酒を造っていたら今でもジャパニーズクラフトジンは誕生していなかったかもしれません。
後編ではジャパニーズクラフトジンの魅力やおススメのジンをご紹介させて頂きます。
本日も最後までお読み頂きありがとうございます。
それでは素敵な夜をお過ごしください。